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ホーム 現場レポート 山間に点在する施設と 自治体の要望に柔軟に応える
KKEの現場レポート
高知県・香美市上水事業所
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香美市は高知県の東部に位置する、農業や観光が盛んな地域です。2006年(平成18年)に香美郡土佐山田町、香北町、物部村が合併して香美市となりました。 青果柚子の出荷量が日本一であることで知られるほか、子供たちに人気の「アンパンマン」の作者、やなせたかし氏の故郷としても親しまれています。土佐山田地区はその南西部が高知平野にあたり、市役所を始め様々な商業施設などがあります。この地区は香美市で唯一、上水道による給水が行われています。 これに対して、旧香北町、旧物部村はそのほとんどが山林で、簡易水道が11区域、飲料水供給施設が8区域。関連する施設、設備を合わせると、保守点検作業が必要な場所が170箇所あまり。過疎化が進み、市の職員による維持管理体制の継続が次第に厳しくなる中、安心して使える水の安定供給という課題への対応が急務となりました。
香北地区は物部川の両岸に棚田や集落が点在する人口5,000人弱の地域。物部地区はその面積の95%ほどが山林で町の半分が奥物部県立公園に、山岳渓谷の地域は剣山国定公園に指定され、豊かな自然の中で2,000人あまりの人が暮らす地域です。どちらも山の斜面に集落が点在し、それぞれの人の暮らしがあります。 これまで、それぞれの集落は独自の水源から自分たちの水をひき、暮らしを守ってきたという長い歴史があるために、その集落の数だけの小さな水源が、現在の施設となって引き継がれてきたのではないかという話でした。しかし、どの施設がどこにあるのか、たどり着くのにどのくらいの時間が必要なのか。正確に教えてくれる資料はありませんでした。
香北・物部地区の簡易水道、飲料水供給施設の維持管理を開始するために、管理すべきすべての施設・設備の詳細を明確にすることから始めました。 「初めてきたときは、正直なところ現場の凄さにびっくりしました。クルマが通れず往復2時間ほど歩かなければならないとか、細い橋を渡らないとたどり着けないとか。かなり危険だと感じる現場もいくつかありました。」 と最初に現地入りした木原所長。同行した所員の林さんは 「地図に記そうにも既存の地図ではわからない施設がいくつもありました。そこでGPSを活用して、それぞれの施設への所要時間などをひとつずつ割り出していくんですが、大変な作業でした。」 それまで見えていなかったことも、少しずつ明らかに。奥深い自然の中でひっそりと、まるで山林や渓谷の一部分として存在するような施設たち。この地域の山林と川、湖が織りなす美しい自然全体が、おおらかでとても厳しい、大きなひとつのプラントのようにも思えてきました。 「浄水場ならあまりないでしょうけど、ここは一日中体を動かすことになります。健康にはいいですよ。景色もいいし。」 およそ1年の時間をかけて、点在するたくさんの施設の位置や経路、保守点検でやらなければならないことなど、その詳細がデータ化されました。香北地区・物部地区の水道の本当の姿がここに見えるようになりました。
作成した施設のマッピングデータをもとに、施設管理オペレーションのマニュアルが作られました。施設点検のスケジュールや手順。経路や危険箇所、安全対策と、これまで培ってきた経験や技術が詰め込まれた、超カスタムメイド。 「実際の点検業務が始まり、現場にも慣れてきたとはいえ、怖いと感じる場所はまだまだあります。そういところはとにかく慎重に、安全第一で対応するようにと所員にも言い聞かせています。」 と木原所長。現在4人いる所員全員が、「厳しく優しい所長です」と口を揃えます。 170以上の施設のすべてを2週間に1回、主要な施設については1週間に1回必ず点検。緊急時に備えた宿直や連携。チーム全員がキビキビと動き回っている印象でした。
事業所オフィスが「民家」だというのもこの事業所のユニークなところ。いわゆる普通の住宅にデスクを入れ、機材や検査用の機器を置き、業務の拠点となっています。地元自治会にも入り文字通り地域フレンドリーな事業所となっています。 「地元の人が結構声をかけてくださるんです。ご苦労さまとか。それが嬉しいです。地域密着でやっているんだなという感じがして。」 オフィスの壁に貼られた香美市の地図を改めてみると、その地域ごとに、暮らしの歴史や事情があって、だから、その暮らしを支えてきた水にもその地域ごとの個性や事情があることを実感させられます。 「地方では過疎問題やいろいろな悩みを抱えている自治体がたくさんあります。私たちやクボタグループの力を生かして、そういったご要望に柔軟に応えられるよう、その架け橋になりたいと思っています」 その地域の水を守るということは、その施設とその地域の暮らし、自然環境と密着するということなんだなと思いました。